"元気"だからこそ備えたい親孝行になる老後施設の選び方
「シニア向け分譲マンション」は別名を「シルバーマンション」とも言われています。高齢者の体に配慮されたバリアフリー完備の分譲マンションです。民間事業者が取り扱っています。
「シニア」「シルバー」には明確な定義があるわけではありません。一般的には定年退職後の65歳前後からを指しますが、老後の準備を一足先にするために50歳から入居できるマンションもあり、シニア向けマンションに入居できる年齢は物件ごとに異なります。
住み慣れた家で老後を過ごすのも魅力ですが、一方で最近人気なのはシニアにとって暮らしやすい環境に移行して老後を過ごすライフスタイルです。老後を一人で暮らす人も増えている現代では、不安なく暮らせる環境を求める人も少なくありません。
シニア向け分譲マンションはそんな選択肢のひとつです。ライフスタイルには向き不向きがあります。自分あるいは親にとってシニア向け分譲マンションが適しているか判断するために、メリットとデメリットを確認しましょう。
シニア向け分譲マンションのメリットは、第一にシニア世代の暮らしやすさが挙げられます。バリアフリーはもちろん、調理や清掃といった家事サービスを依頼できるシステムが整っているマンションがほとんどです。そしてフィットネスジムやレストラン、シアタールーム、温泉など、娯楽施設がマンション内に設置されていて、遠くまで出かけることなく生活を楽しめます。友達も作りやすいでしょう。
また、安否確認にも対応してくれるので、本人も家族も安心です。
分譲マンションなので、住まなくなったときは賃貸として活用したり売却したりといった選択肢があります。今後はシニア向け分譲マンションのニーズは高まることが予想されるので、資産形成としてのメリットも注目されるようになるでしょう。
シニア向け分譲マンションはバリアフリーや娯楽施設など設備が充実しているため、購入費用は一般的なマンションと比較して高額です。さらに、維持にも費用がかかります。高額所得者向けの住まいだと言えるでしょう。
現時点ではまだシニア向け分譲マンションの数は多くありません。選択肢が少なく、本当に気に入ったマンションに出会えるかは運次第です。サービスが期待したものではなかったときでも、購入してしまうと簡単に引っ越しもできないかもしれません。
購入時は元気でも、将来介護が必要になる可能性もあります。その際はよりサービスが充実している施設に入るため、退去しなければいけなくなります。賃貸や売却などに活用できますが、そのときに資産価値が下落している可能性は否定できません。
介護付き有料老人ホームは、介護を必要とする高齢者が生活する施設です。食事・入浴・排泄などの介護サービスや掃除・洗濯などの家事サービス、体力の維持・向上のためのレクリエーションやリハビリなどのサービスを受けられます。厚生労働省の基準をクリアし都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。
シニア向け分譲マンションがアクティブシニアを対象にしていることに対して、介護付き有料老人ホームは要介護のシニアを対象にしています。
介護サービスの有無と同じくらい大きく異なるのは住居の権利形態です。シニア向け分譲マンションの権利は「所有権」。それに対して介護付き有料老人ホームの権利は「利用権」あるいは「賃借権」です。
有料老人ホームの6割以上が「利用権方式」を採用しています。利用権方式は居室や共有部分、介護、生活支援などのサービスをパッケージ化してその利用権を販売する契約形式です。不動産の賃貸契約ではなく、パッケージ化された商品利用契約ということになります。
賃借権には、一般的な居住部分の賃貸借契約である「建物賃貸借方式」と終身の賃貸借契約である「終身建物賃貸借方式」の2種類があります。居住部分の契約のため、介護ほかサービスについては別途契約が必要です。有料老人ホームにおいて賃貸借契約は少し特殊な契約と言えます。
サービス付き高齢者住宅はバリアフリーに対応した高齢者向けの賃貸住宅のことです。「サービス付き」のサービスには安否確認・生活相談・掃除や買い物代行などの生活支援があります。
賃貸契約という点が購入であるシニア向け分譲マンションとの違いのひとつです。シニア向け分譲マンションは不動産購入のため資産として相続が可能。一方、サービス付き高齢者住宅は「建物賃貸借契約」の場合に遺族が賃借権を引き継げる可能性がありますが、「終身建物賃貸借契約」の場合は引き継げません。
自立して生活できるシニア向けという点ではシニア向け分譲マンションと同じです。しかし、サービス付き高齢者住宅は介護・医療体制を整えた「特定施設」の指定を受けている所があります。
シニア向け分譲マンションはアクティブに充実したシニアライフを過ごすことを目的にしているため、娯楽施設がマンション内に充実しているのが特徴です。サービス付き高齢者住宅はあくまで住居。娯楽施設が充実している住宅は多くありません。
シニア向け分譲マンションとの共通点は、自立して生活できるシニア向けということです。そのため暮らしは自由です。有料老人ホームのように外出や外泊の許可を取る必要もなく門限もありません。いつどこで何をするにも自由なのが大きなメリットです。
シニア向け分譲マンションは、数千万円~数億円の購入費用に加えて、月額利用料として10~30万円の費用がかかります。
購入時の費用のことは「入居一時金」と呼ばれていますが、その金額は施設によって様々です。立地や設備・サービスの充実度によるので、少しでも費用を抑えたい場合は様々な施設を比較する必要があります。
一般的なマンション購入では、購入費用の他に毎月の管理費と修繕積立金が必要です。シニア向け分譲マンションも月額料金がかかります。ただし、管理費や修繕積立金の他に、見守りサービスや共用施設の利用料などが加わる点には注意が必要です。一般的なマンションより高額の月額料金が必要だと考えておきましょう。
シニア向け分譲マンションでは、介護や医療サービスは提供されません。介護サービスを受けたいときは、外部へ依頼することになります。マンション全体がバリアフリーになっているので、外部の介護を受ける場合も過ごしやすいでしょう。
緊急時の救急車や医師の手配などはマンションのサービスとして対応してくれるところがほとんどです。日常的に積極的な介護介入はありませんが、常に見守りをしてくれているので、緊急時には迅速な対応が期待できます。
シニア向け分譲マンションの入居条件は、自立した生活ができることです。要支援1・2、要介護度1~5の高齢者でも外部の介護サービスに委託することで入居できるマンションもあります。
マンションには見守りのスタッフがいますが、介護サービスは提供できません。認知症の方への対応もできないことには注意してください。
身の回りのことを1人でできるほか、具体的な入居条件はマンションによって異なります。
入居対象者は「元気なシニア」ですが、実際に入居するためには経済力が高いハードルです。初期費用だけでも数千万円~数億円、入居後は10~30万円が毎月利用料金としてかかります。
施設がバリアフリー化されているほか、安否の見守りサービスやフロントでの来客受付、フィットネス、レストラン、温泉など、様々なサービスや設備が整っているので、資金に余裕があるアクティブな高齢者にとっては暮らしやすい環境です。
シニア向け分譲マンションへ入居する際は、各施設に申し込みをします。手続きは一般的なマンション購入と同じです。内覧後購入申込書を提出。その後面談が実施されます。
所得証明書や住民票に加えて、健康診断書の提出も必要です。要介護度調査が行われ、介護の必要性を踏まえて審査が行われます。審査の際は資産や収入額も考慮される他、施設によって年齢制限がある可能性もあるので注意してください。
審査に通れば売買契約を締結して引き渡しです。身元保証人が求められることもあります。
シニア向け分譲マンションへ入居することになったら、事前に持ち物を整理しておくといいでしょう。終活はトレンドとして注目を浴びており、ぜひトライしたいところです。これからの暮らしに必要なものだけにすると、引っ越しが楽になります。新しい暮らしもスッキリとスタートできるでしょう。
シニア向け分譲マンションの購入は、金銭的なハードルが高いです。資産になるとは言っても、費用面で尻込みしてしまう人も少なくありません。そんなときは分譲マンションにこだわる必要はなし。老後の住まいは賃貸で検討することもいい選択肢のひとつです。
シニア向け賃貸住宅なら、バリアフリー設計になっている高齢者向けマンションに賃貸で暮らせます。購入に比べてまとまった費用が必要ありません。賃貸なので、引っ越しも可能です。気軽に入居できるでしょう。
サービス付き高齢者住宅と比較して、日常的なサポートはほとんどついていません。マンションによっては、必要に応じて希望のサポートを契約できるところもあるので、ご自身あるいはご両親に合うサービスを提供しているシニア向け賃貸住宅を探すのもいいでしょう。
購入と比べてグッとハードルが低く感じるシニア向け賃貸住宅ですが、もちろん向き不向きもあります。メリットとデメリットを確認していきましょう。
シニア向け賃貸住宅なら、バリアフリーのほか今の家より暮らしやすい環境での暮らしができます。若い頃に建てた家は「2階へ上がる階段がしんどい」と、高齢者にとって暮らしやすい家ではないかもしれません。家は売って賃貸住宅に引っ越すことを考えるなら、高齢者への配慮がある賃貸住宅がおすすめです。
賃貸住宅なら老人ホームとは異なり介護サービスはついていません。必要なときだけサポートを依頼すればいいので、生活は自由です。これまでの自宅で過ごすのと同様の暮らしができます。
また、住んでみて環境が合わない場合は引っ越しが可能。気軽に住んでみることができます。初期費用も購入と比べると負担が少ないです。
家族の近くの物件ならいつでも行き来ができて安心です。同居も施設への入居も抵抗がある親御さんには、シニア向け賃貸住宅が向いているかもしれません。
シニア向け分譲マンションと比較するとコスト面での負担は少ないものの、一般的な賃貸住宅と比較すると割高です。高齢者に配慮した設計になっていることから、家賃相場も保証金も、高めに設定されています。
賃貸契約にはサポートサービスは含まれていないため、介護サービスが必要になれば別途依頼しなければいけません。当然、その費用は家賃とは別です。重度の介護が必要になった場合は、賃貸住宅での暮らしが難しくなるでしょう。介護サービス付きの施設へ引っ越しが必要になる可能性もあります。
サービス付き高齢者住宅と比較すると、日常的なサポートがついていない点はシニア向け賃貸住宅で暮らす上で注意すべきです。介護が必要になったときは、別の住まいを改めて検討することになるかもしれません。
賃貸住宅でも「緊急時にガードマン」を呼べるところがあり、付属のサービスは様々です。必要なサポートを確認して、希望するサービスを受けられる住まいを選択してください。
アクティブシニア向けの住まいには分譲マンションと賃貸住宅があります。分譲マンションなら娯楽施設が充実し、見守りサービスもついていることがほとんど。その分、費用が高額です。賃貸住宅の場合は、大きなサポート体制は期待できない代わりに費用面のハードルは低くなります。それぞれのメリットとデメリットを見極めて、自分あるいはご両親に合う住まいを選びましょう。